高校生棋士・藤井聡太二冠の大活躍で、ちょいちょい話題が全国的なニュースとなる将棋界。
私は以前から「棋士の生きざま」に興味があって、たまにホロスコープ・チャートを作って星を読んでいます。
棋士に限ったことじゃありませんが、子どもの頃からひとつの世界に徹底的にのめりこんでいる人たちの生きざまにすごく興味があって惹かれます。
幼少期のうちに、本当に自分の才能が開花できるものにめぐり合えるというのも、ひとつの運だと思いますし、またそれにのめりこむことを家族が全力で支えてくれたと環境があったということも大きいでしょう。
しかし、それが揃っていたとしても、決して成功するかどうか、結果が出るかどうかはわからないのが勝負の世界です。
スポーツの世界は選手生命がとても短く、人生のかなり早い段階でピークがきてしまいますが、対して文化系の世界は身体能力にそこまで依存しないので、長く活躍できるのでじっくりと成熟を見ることもできますね。
将棋界の面白さは、日本にしかプロが存在しないという、非常にローカルに限定された世界の中で、しのぎを削るところだと思います。
明確に勝敗が示される徹底した勝負の世界の中で、プロとなるような実力を生まれ持つと、子どもの頃からずっと顔を突き合わせて、ライバルたちと切磋琢磨しながらも、同時にお互いの才能をもって研鑽し合うことを数十年かけて行うという、その世界の独特の雰囲気が、とても興味深いです。
本書「将棋の渡辺くん」は 2020年9月現在「名人」「棋王」「王将」の三冠を獲得している渡辺明三冠の奥さまが描く、名人の日常生活マンガです。
「そんなすごい人がいったいどんな日常を……!?」と思ってページをめくると、まったく忖度ないというか、むしろこんなことまで描いてもいいのか?というほど、あけすけに名人の日常生活が描かれていて、読めば読むほど、名人のことが好きになります(笑)
小学生の頃から将棋しかしていない天才というのはこういうものだろうな……と、ある程度は予想していた通りというか、大幅にその予想を通り越して、コミカルかつマイペースな日常を過ごしていらっしゃるのです。
「君は将棋の才能を神さまにもらった代わりに、他のものを欠落したんだねえ」と作者である奥さまが作中で何度も繰り返している通り「できないこと」と「知らないこと」が多すぎる名人。
虫が大キライで、野菜がキライで、ライターの使い方を知らず、鉛筆も削れず、蚊取り線香の使い方も知らず、マンガは大好きだけど、活字は一切読まず、あらゆる知識をマンガから学び、ぬいぐるみが大好きで、彼らと共に毎日を過ごす名人。
奥さんが息子に英語を教えているとき、名人にも出題してみると「Does he play soccer?」という文章がわかりません。それどころか「ダズなんて中高6年間で一度も習ってない。絶対習ってない」と言い張る名人(笑)
名人は1989年4月23日生まれの牡牛座なのですが、これを読んでいると実に「牡牛座の鑑」というか「The牡牛座」と言いたくなるほどマイペースで、他者に影響されず、自分自身の快不快に忠実で、徹底的に理論を展開して独自の世界を創り上げていることがわかります。
天才はこうでなくちゃ(笑)
本書はまったく将棋の知識なくても読めますし、むしろ少しずつ独特の将棋界や棋士の日常について知ることができるでしょう。
史上4人目の中学生棋士であり、永世竜王や永生棋王の資格を持っている天才棋士がいったい、どのような日常を過ごしているのか……!?
タイトル戦などで中継される凛々しい和風姿からはまったく想像もできない、名人のほっこりライフをぜひお読み下さい!!