インドの洗礼!?

数年前にインドへ行ったときのことです。先に言っておくと、今回は不思議な話ではなく、ただの印象深いメモリアルな思い出話です。あらかじめご了承ください。

成田からニューデリーへと向かうフライトの中での出来事です。サービスと安心の全日空便で悠々自適の旅となるはずでした。

インドへの旅はなかなか長いです。大体9~10時間でしょうか。わたしは中長距離のフライトのときは大体、真ん中の島である四人席の通路側をとることが多いです。気兼ねなくトイレに立ちたいのと、真ん中の内側の席は、満席にならない限り最後まで空いていることが多いためですね。

そのときも、四人席の右端にわたしが座り、左端とその隣にインド人の老夫婦が座り、あいだの一席は空いたまま出発しました。ラッキー。フライト時間が長いときは、隣が空いているとスペースが広めに使えるのでラクチンです。

そしてこういうケースのとき、空席をはさんでいるのが日本人同士だと特に申し合わせなくても、なんとなく「空席を半分ずつ使いましょう」という雰囲気になります。空席の半分ずつにお互いの手荷物を置いたり、なんとなく半分ぐらいまで足を伸ばしたり、それぞれ自分側の肘掛けを使ったりします。

しかしそのとき客席をはさんで座っているのは、インド人夫婦のおばあちゃんの方でした。そして彼女は飛行機が飛び立つやいなや、おもむろに肘掛けをあげると、シートの上に横たわりました。足を旦那の上に、頭を空席に、どーんと大胆に3席分使って。

ああ、わたしの彼女のあいだの空席は、占拠されてしまいました!!

なんだよ、なんだよ~!!
しかし仕方ない。相手はおばあちゃんだし……と諦めて、ごはんを食べたり、本を読んだり、映画を観たりしているうちに、眠くなってきました。

うとうとと眠りはじめたときです。寝ていたおばあちゃんが、わたしの左腕を肘掛けから降ろし、そして肘掛けを持ち上げました。そして、なんと、わたしの膝を枕にして、眠りはじめたのです。

ええ一?!
普通、知らない人の膝の上で寝るか?!

しかし相手はインド人。日本人の常識で考えてはいけません。わたしはすかさず通りかかったフライト­アテンダントを呼び止めました。

「すみません、知らないおばあちゃんがわたしの膝の上で寝るんですけど!」
「え、この人、知らない方ですか?」
「知らない人です!!」

フライトアテンダントもびっくりして、おばあさちゃんを起こし、自分の席に戻るようにうながしました。すると、おばあちゃんが起き上がったので、すかさず肘掛けをおろして、持ち上げられないように、しっかりと肘で抑えつけました。

しかし、また眠りかけると、おばあさんが肘掛けをあげて、その隙間から、わたしの膝のうえで再び眠り始めるではありません。

くそー。勝手に膝の上で寝るなーーー!!

眠かったこともあり、だんだん意地悪な気持ちになってきたわたしは、わざと足を揺らして、ごっとん、と、おばあちゃんの頭を空席側に降り落としました。しかし、懲りずにおばあちゃんは、すぐに膝の上に戻ってきます。

フライトアテンダントさんたちが相談しながら何度も呼びかけて、おじいちゃんの方にも頼んでおりましたが、おばあちゃんは頑なに動きません。

すみません…と申し訳なさそうにフライトアテンダントさんから「本日はかなり席が埋まっておりまして、後方の四人席の真ん中に空いている席が1席あるだけなんです……そちらに移動されますか?」と提案がありました。でも、いまさら四人席の内側に入るのも面倒くさいし。

ちょっと考えた末に、わたしはとうとう、おばあちゃんと共存する道を選びました。

こうなったら仕方ない。
よそのおばあちゃんだけど、うちのばあちゃんだと思おうではないか。
そして、膝の上で寝かせてやろうではないか。

ついにわたしはインド人の名前も知らないおばあちゃんに順応することに決めて、膝を枕に貸し出し、眠りにつきました。ひとたび受け入れてしまえば、もうたいして気になりません。こうしてわたしはインドに染まるのか……(笑)

数時間のち、飛行機が無事にニューデリーに到着。立ち上がって飛行機から降りようとしたとき、いまやすっかり馴染みとなったおばあちゃんと、目が合いました。

「バーイ」と微笑みかけた、わたし。

しかし、おばあちゃんは「あんた、誰やねん」という冷たい一瞥ののち、プイッとそっぽを向いたのです。

くそーーーインド人めー!!

わたしの愛とうるおいとやさしさを返せ!と、痺れる膝の痛みと共に叫びたくなるような、インド到着前の洗礼でした。

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不思議な話
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