『ノマドランド』

最後のショットで泣けました。
主人公ファーンの言った通りの風景がそこにあったから……。

今回ご紹介するのは「ノマドランド
第93回2021年のアカデミー賞・作品賞に輝いた作品です!!

リーマンショックにより、1つの大きな会社がつぶれる

その会社で成り立っていた街がなくなる

街に住めなくなる

家を持っていても家の価値はゼロ。もらえる年金は月5万円
アメリカでは家賃が高いため、この金額ではとても暮らしていけない

ワーキャンパーと呼ばれる車上生活者になる
:

こういう人が今のアメリカにはたくさんいるらしいのですが、まさにこの体験をし、さらに夫を亡くした初老の女性が主人公です。

ホームレスではなく、ハウスレスの人々。「ノマドランド」のノマドとは遊牧民という意味です。

ワーキャンパーは、だいたいサンクスギビングデーからクリスマスにかけてはプレゼントで大忙しのAmazonで働き(モノを持たず車で暮らしている人がAmazonで働き、モノを発送しているというアイロニーも感じる……)、それ以外は車で移動しながら、春夏はキャンプ場、秋は果物などの収穫、その間にハンバーガーショップで働くなどしながら生計を立てて、車で眠ります。

年をとってから季節労働者をしなくてはならない……。アメリカの60〜65歳以上で、こんな生活をしなくていいのは、なんと17%以下!!らしいです。日本でも格差社会がはっきりしつつありますが、65歳になって「働きたい」というより「働かなきゃいけない」人が多いということです。

なかなかのしんどいアメリカの実情。この暗さが、この映画全体の根底には流れています。

しかし、その一方で大変さは変わらないものの、フランシス・マクドーマンド演じる主人公のファーンは、このノマド生活に少しずつ喜びをを見出していきます。「一緒にこの家に住もう」とデイビッドに言われた後のファーンの行動がそれを表しています。

アメリカは広くて、美しい!

私が最後に泣けたのはまさにそこでした。人間がいろいろなものを作っても、人の営みなどまるで関係ないかのように、それを飲み込むほどの大自然があることにうれしくて涙が出ました。同時にまた、失ったものへの悲しみとに。

私もファーンと一緒に旅をし、アメリカの自然を体験し、何の大きなドラマも起こらない、この物語を続けていたい気持ちになります。凛とした、もはや演技に見えないフランシス・マクドーマンドの顔と美しいアメリカの景色をずっと見ていたい気持ちになるのです。

ハウスはなくしたけれど、ノマドの人々にとっては、アメリカ全土が我が家であり、もしかすると、その方が本当の豊かさなのかもしれない、なんだかそちら側に行きたい気持ちにまでなるのでした。もしかして、本当の風の時代ってこういうものなのかも?しれないですね。

淡々と静かな映画です。一緒に見に行った隣りの友人は途中で寝てしまい、もうひとつ隣りの友人は「身につまされて辛い」と言っていました。それでも、大画面でぜひ見てほしい映画です。

強いてオススメするなら、どう道を進もうか、悩んでいる人に。どの道でも失うことと、得ることが必ずある。失ったものは大きいけれど、そこから思いもしない拾い物や価値観が変わるような大きなものを得ることも同時にある、ということを無意識に感じる映画でもあると思うからです。

この映画の感想を書いてくれた人・ルーリー
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