わたしは、酒井駒子さんの絵の大ファンです。
特に『くまとやまねこ』は、大好きでプレゼントしたくなる一冊。
どんなお話か知りませんでしたが、絵が酒井さんなので、見つけたとき、すぐに買いました。
大人向け絵本の女王とも呼ばれる酒井さん。
海外でも高く評価されていて、ニューヨーク・タイムズ「2009年の子供の絵本・最良の10冊」にも選ばれています。
酒井さんの絵は、下地を黒に塗ってから描くという、黒の使い方による独特な世界観。かわいいだけではなくて、暗さや影、孤独や静けさが、大人女子を惹きつけるのでしょうね。
『くまとやまねこ』は、黒ベースに少しのピンクが使われていて、かわいくて美しいのです。優しくて、あたたかい酒井さんが描く、動物の絵を見ているだけで癒されます。
絵だけで十分に嬉しいと思って買った絵本ですが、心あたたまる物語に、はじめからウルウル。
仲良しのことりが、突然、死んでしまって、悲しくて、悲しくてどうしようもないくまのお話。
いつも一緒にいた大好きなことり。
かけがえのない存在を失い、ひとりぼっちになってしまったくま。
そんなある日、くまは、やまねこと出逢います。
やまねこは、くまにとって、どんな存在になっていくのでしょう。
酒井さんの絵が、お話を引き立てていきます。
くまの悲しんでいる姿。元気だったころのことりのかわいらしさ。
くまを気にする動物たちの表情。やまねこの雰囲気。
描写によって、言葉以上のものが、こちら側に伝わってきます。
酒井さんの絵は、語りかけてくるんですよー。
大切な人を失ったときの喪失感。
生きていると悲しい出来事がありますね。受け入れることが、難しいこともあります。
それでも生きていかなくてはならない。そんなつらい経験をした人には、くまの気持ちが分かるでしょう。くまと自分とを重ねて涙してしまう。
失うことは、とても悲しいけれど、楽しい時間もたくさんあった。
くまが、ことりを失った気持ちに寄り添いながら、誰かとの思い出を振り返る優しい時間にきっとなるのではないでしょうか。
最後のくまとやまねこの会話に、じんわりと浸ってしまう。
優しい言葉と優しいタッチの絵に、読み終わるころには、きっと癒されているでしょう。
泣くのを我慢してきた人に、読んでほしい一冊です。